アーユルヴェーダで、心と体を満たす~第一回
みなさんは、アーユルヴェーダと聞くと何が思い浮かぶでしょうか?おでこにごま油をたらす、エステティックマッサージ? もちろん、それもアーユルヴェーダのひとつではありますが、アーユルヴェーダはそれだけではありません。もっと広く生命活動に関わるもので、今からおよそ5000年前にインドで始まったとされる伝承医学をさします。そんなに古いアーユルヴェーダの教えを、今の日本で、ライフスタイルのひとつとして取り入れている人が増えているそうです。それは、アーユルヴェーダが「自分の内なる声に耳を傾け、もともと持っている力を生かして心身が喜ぶ暮らしをする」「現代生活でたまっていく毒を出し、心身を浄化し、健康になる」ことをめざしているからかもしれません。
今の日本は、生活は便利になりましたが、身体によくない食べ物やストレスは増え、心と体のバランスを崩す人が増えているといわれています。そういう時代の中で、きっと、心と体に負担をかけないアーユルヴェーダの考え方が共感されているのでしょう。アーユルヴェーダには、健康で穏やかに暮らすために、食事、暮らし方、マッサージ、ヨガなどさまざまな教えがありますが、中でも最も大切にしているのは「毒だし=デトックス」といえるでしょう。毒だしとは、日々の暮らしで少しずつたまっていく毒が、体や心の不調を引き起こすと考えられているからです。そこでアーユルヴェーダでは、食事や暮らし方、マッサージを通してデトックスし、免疫力を高めていこうというのです。
まず今回は、アーユルヴェーダの中でも最も身近と思われる食事について触れてみたいと思います。アーユルヴェーダを実践している人は、肉や魚は食べなかったり、ベジタリアンが多いですが、必ずしもそうしなくてはならないわけではありません。アーユルヴェーダでは、「何を食べるか」よりも、「どう食べるか」を大切にしています。食べた後、心と体が満ち足り、胃腸に負担をかけすぎず、何となく体が重くならない食事。そんな食事がよいと考えられています。では、具体的にどんな点に気をつけて食事をすればよいのでしょうか?
①食事はお腹が減ったら食べる
規則正しく食事をとるのは大切なことですが、空腹を感じていないのに食事をとるのはよくありません。食事の時間になってもお腹が減らないというのは、前の食事がきちんと消化されていないから。そういう時は、食事を減らすか、一食ぬいてしまいましょう。胃腸を休めてあげると、次の食事はきっとおいしくいただけることでしょう。また、腹八分目も大事。満腹になるまで食べると、胃にすき間がなくなって消化しにくくなるからです。
②旬のもの、土地のものを食べる
一年中、世界中のものが手に入る時代ではありますが、アーユルヴェーダでは旬のもの、身近な場所でとれたものを食べるのをすすめています。夏には、体をクールダウンさせるウリ科の野菜が、冬には体を温める根菜類が旬であるように、季節の食べ物には、その時々に必要なエネルギーが宿っていると考えられるからです。
③よくかんで食べる
よくかむと、だ液がたくさん出ますね。だ液には、消化を促進する働きや殺菌作用があります。理想は、ひと口あたり20回くらいかむこと。消化を促進するものといえば、こしょうやクミン、マスタードなどのスパイスや、しょうがをとるのもおすすめです。料理にスパイスを積極的に使うと消化がスムーズになり、消化に必要なエネルギーが減ります。すると、余ったエネルギーを燃焼や解毒にまわすことができますね。
④6つの味を食べる
アーユルヴェーダでは、一回の食事で甘・酸・塩・辛・渋・苦、6つの味をとることをすすめています。これらをバランスよく食べることで、高い満足感が得られ、食べすぎを防ぐといわれています。全部とるのは無理でも、なるべくいろいろな味をとるように心がけたいものです。
万能オイル、ギーを日常生活に取り入れましょう!
アーユルヴェーダクッキングでなくてはならないものといえば、ギー。体に活力を与え、消化吸収に優れ、デトックス効果もあるとされる優れたオイルです。無塩バターから不純物を取り除いたもので、ミルクバターといった名称で売られていることもあります。市販品もありますが、簡単に作れるので手作りしてもよいでしょう。炒め物をはじめ、スープやカレー、お菓子作りなど、どんな料理に使えます。パンにそのまま塗ったり、みそ汁に入れたりしてもおいしいです。食用以外にも、唇や肌の乾燥対策、軽い切り傷などとして肌に直接塗ってもよいでしょう。

手作りギー
・準備するもの(作りやすい量)
無塩バター…1個(200g)
鍋(焦げにくいステンレス製など)
ざる
ガーゼか厚手のペーパータオル
耐熱の保存ビン
・作り方
①鍋に無塩バターを入れ、弱火にかける。
②白いもやもやっとしたものと細かい泡が出てきたら、弱火で10分ほど加熱する。
③泡が大きくなり、白いもやもやがなくなってきて、下の方の泡がなくなってくる。
④ポップコーンのようないい香りがしてきて、すっきりした黄金色になり、底の方が茶色くなってきたらできあがり。火を止めてそのまま粗熱を取る。
⑤ざるにガーゼを重ねて敷き、④を静かに流し入れてこす。
簡単アーユルクッキング
レンズ豆のキチャディ(インド風かためのお粥)
・材料(2~3人分)
米…1/2カップ
レンズ豆…1/4カップ
お湯…2と1/2~3カップ
塩…小さじ1弱
ターメリック…小さじ1/4
ギー…大さじ2
クミンシード…小さじ1/2
・作り方
①米は研ぎ、レンズ豆は洗い、合わせて1時間ほど水に浸す。
②①の水気をきって厚手の鍋に入れ、お湯を入れる。ふたはしないで中火にかけ、沸騰したら岩塩とターメリックパウダーを入れて弱火にする。
③ふたを少しずらしてのせ、柔らかくなるまで30分ほど炊く。途中で水分が足りなくなったらお湯を少し足し、時々混ぜてこげつかないようにする。
④小鍋にギーを弱火で熱し、クミンシードを入れる。煙と香りが出て濃い茶色になるまで、1~2分待つ。
⑤④を③にかけて、混ぜて完成。
※好みでパクチーをふっても。
じゃがいものサブジ
・材料(2~3人分)
じゃがいも…1個
ギー…大さじ1
クミンシード…小さじ1/2
コリアンダーシード…小さじ1/2
A(塩…小さじ1/4、ターメリック…少々)
・作り方
①じゃがいもは小さめのひと口大に切ってゆで、水気をきる。
②フライパンにギーを弱火で熱し、クミンシード、コリアンダーシードを炒める。じゃがいもとAを入れて混ぜる。
にんじんの炒め物
・材料(3~4人分)
にんじん…1本
ココナッツオイル…大さじ1
マスタードシード…小さじ1
ターメリック・塩…各少々
くるみ…1/4カップ
ココナッツファイン…大さじ2~3
・作り方
①にんじんは、せん切りにする。
②フライパンにココナッツオイルを弱火で熱し、マスタードシードを入れる。弾けてきたら、ターメリック、塩を入れてココナッツオイルになじませる。
③くるみを入れてさっと炒め、①を入れて2~3分炒める。ココナッツファインを入れてよく混ぜ、火を止める。
アーユルヴェーダをはじめよう
料理にかけるだけで、甘・酸・塩・辛・渋・苦、6つの味を1度にとることができるミックススパイス。クミン、しょうが、ターメリック、フェネグリーク、ヒングが入って、体と心のバランスを整えます。
オランダで自然放牧された牛のミルクから作られた、グラスフェッド・ギー。EUオーガニック認証取得。無塩発酵バターを18時間以上じっくりと加熱し、不純物をほぼ除去しています。
アーユルヴェーダの食事は意外に取り入れやすそうですね!
みなさんもぜひ取り入れてみましょう♪